タイトルを直訳すると、「幸せになれる1万4000のこと」。


その名のとおり、著者が「シアワセ!」と感じたことをズラーーッと延々1万4000個も、箇条書きにしちゃった本なのだ。


しかもその小さな幸せ、というのが、


「スパイスの効いたチョコレート・ドリンク」
「バスルームの石鹸の香り」
「公園のコンサート」


うわ、ちっちゃっ(笑)。まあ良く言えば、かなーり身近な事柄ってこと。裏表紙には、「ちょっと風変わり、でも私たちをたまらなく虜にして、幸せにしてくれる小さなこと一覧」とあるけれど、まさにその通りの、「小さな幸せの膨大なるリスト」なんである。


でもこれが、パラパラめくって眺めていると意外とハマる。


「霧笛の音を聞きながら眠りに落ちること」
「キャンドルの灯に照らされたテラスから海を眺めること」


なーんて、思わずその情景を思い浮かべてしまうロマンチックなものがあれば、


「警官の友だちをつくること」
「ビールの缶を集めること」


などなど、「うん?」と首をかしげてしまう一風変わったものまで(警官の友だちは、1人いると便利そうだな……)。なかには、


「日々、周囲のものを旅行者の眼で眺めること」
「60歳以降の人生」


こんな含蓄のあるひと言も登場する。なにせ1万4000も揃っているので、その内容もとにかくバラエティ豊富。著者が女性のせいか、食べ物、しかもおいしそ〜うなスイーツの描写も多いので、読んでいるうちにお腹が減ってきちゃう、という困った(?)効用もアリ。


「幸せとは何ぞや!?」と大上段に構えた幸福論もいいけれど、私たちのフダンの幸せって、こういうささやかな「ちょっといいなぁ」で成り立っていたり、するのよね。


とにかく短い箇条書きばかりなので、英語が苦手な人でもとっつきやすいはず。ベッドサイドに置いて、眠る前に気が向いたページを開いてちょっと眺める、そんな楽しみ方が似合う一冊だ。でも一度開くと、自分のお気に入りの「幸せ」を探すまで、ついじいーっと読み入って寝る時間が遅くなる、というのが私のパターンなんだけど……。


14,000 things to be happy about.

14,000 things to be happy about.(洋書)
著者:Barbara Ann Kipfer
出版社:Workman Publishing
ISBN-10: 0894803700
ISBN-13: 978-0894803703
発売日:1990/1/4
価格:$8.95(US) $11.95(CAN)

はい、上で気持ちがホッコリなごむ言葉を紹介したので、今度は正月ボケの心がピリッと引き締まる辛口なやつを。


時代はぐーんと400年昔に遡り、16世紀のフランス貴族、ラ・ロシュフコー公爵が記した箴言集でございます。


フランス貴族、といってもこの本にロマンチックさは欠片もない。箴言とはいわゆる「教訓的な格言」ってやつで、このフランス人のオッサン、じゃなくて公爵は、「愛・友情・欲望・自己愛」など人間誰もが心に持つ業深さの本質を、短い一文でピシリと鋭く言い表すのだ。


その鋭さといったら、もう歯に衣着せぬとゆーか、待ったナシとゆーか。


「われわれは、どちらかといえば、幸福になるためよりも、 幸福だと人に思わせるために四苦八苦しているようである」


「われわれが小さな欠点を認めるのは、 大きな欠点を持っていないと、人に信じさせるためである」


とほほ、その通りかもしれません……と思わずうつむいてしまうほど、図星を指してくるものが多いのだ。うーん、こんな奴が友だちだったら、あんまり人生相談なんてしたくないかも。でも、建て前抜きで本質をズバリ突かれるのって、怖いもの見たさにも似た小気味よさがあるのも事実なのよね。


公爵様は、もちろん恋愛に対しても容赦ナシ。


「恋人同士がいっしょにいて少しも飽きないのは、 ずっと自分のことばかり話しているからである」


「恋には一種類しかない。だが、その写しは、千差万別、無数である」


この辺りの箴言は、TV番組『恋のから騒ぎ』の冒頭でも使われていなかったっけ?


まあ毒にも薬にもならんような「自分磨き本」を信じるよりは、これくらいパンチがある方がいい刺激になるかも。人生はいつだって、謎に満ちていてハードなのだ。


でもね、時には心暖まることも言ってくれるの。


「友を疑うのは、友に欺かれるよりも恥ずかしいことだ」


うん、こう言う奴には、やっぱり信用して何でも相談できるかもね。


ラ・ロシュフコー箴言集

ラ・ロシュフコー箴言集(文庫)
著者:ラ・ロシュフコー
翻訳:二宮フサ
出版社:岩波文庫
ISBN-10: 4003251016
ISBN-13: 978-4003251010
発売日:1989/12
価格:798円(税込)
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タナカ マリ
タナカ マリ
(編集者&ライター)
広告やWebコンテンツ制作の世界で、企画・編集・執筆等の仕事を続けて早8年。30代に突入したわりにはあり余る体力を、趣味のバイク、ランニング、サルサダンスで燃焼中。2008年、仕事を一時中断してスペイン語を学ぶため中米コスタリカに約半年滞在。「人生やったもん勝ち」を代々の家訓として掲げることを目論む今日この頃。
エッセイ:思い立ったら、ラテン日和