essay

i003
コヤナギユウ(yours-store)

働くオンナの5年間、
ブログ「i live you!」の傑作を再構成

i REwrite you!

噛み合わない会話はコントと思えば良いのだ。
そう、たとえばこんな具合


写真は全身全霊でコンサバティブ化していた2004年頃の私。結膜炎が酷くなってメガネだった。ちなみに、DJしている写真はフリだけでまったく出来ない。ギターも似合います。弾けないけど。

全身全霊で話しを聞いているつもりなのに、どうしても噛み合わない人っている。
同じ時代の同じ国に生まれた同年代なのに、住んでいるレイヤーが違うかのごとく、全くキャッチボールが成り立たない。

なるべく相手の立場に立って、興味ありそうな共通の話題を探してみても、のれんに腕押し。

端から見ると、白々しいこの会話はきっとコントのように映っているに違いない。
会話のキャッチボールが成り立たない苛立ちが次第に募る。
……ムムム。ハッ!
そうか、噛み合わない状況でも、コントだと思えば良いのだ。
たとえば、こんな具合に。

よりコントらしさを引き立たせるために、便宜上お互い男性ということにしてみよう。

スーツ姿のB、地味目なカジュアルのA
A、B立ち話、A身振り大きく

A「この間の合コン、ホントつまんなくってさー」
B「うんうん」
A「だってね、中学の時の部活を当てようとか言い出すんだよ?!」
B「過去の話しかできなくなるってやだよねー」
A「いやいや、それはニュアンス違うだろ。
 中学の部活は過去の栄光じゃないんだから。
 話題が盛り上がればいいのよ、どうせ茶番なんだし。」
B「ああ」

A、Bの相づちを確認し、仕切り直す様子で

A「あげく、その中学の部活が当たっても“へー”で終わりなのよ、
 話を広げろよと!」
B「ああ、“へー”で終わりますもんね」
A「終わらすなよ!
 あるじゃん色々、話の広げ方なんかさー。
 部活って言うのは切り口でしかないんだから
 野球部だったら
 “ストッキングってネーミングはいかがなものか”とか
 “ヘルメットの耳当てはなぜ両方付けないのか”とかさ。
 テニス部なら
 “ブルマ履くならスコートいらないじゃん”とか
 バレー部なら
 “陰湿な声かけはスポーツマンシップに乗っ取ってない”とかさ。
 (バレーのレシーブ、トス、アタックのふりで)
 お〜と〜せ!(凄む)」
B (足を2度踏みならし手拍子を入れ親指を突き立てながら)
 「ラッキー」
A「それそれそれそれ。むかつくわー」

(一息つきながらあたりを見回して)

A「しかし昼の日比谷公園はスーツばっかりだね。
 あーあ、あの人、スーツで芝生に寝ちゃってるよー」
B「僕もスーツには愛着持てませんね」
A「でも俺もね、スーツにはそこまで愛着持てなくても、
 いちおうそれなりに気を使ってはいるんだよ」
B「僕はもうスーツとかほんとどうでもいいですよ」

ネクタイに指をかけてゆるめるB
あらためてBの全身を眺めるA

A「うわ、改めてみてみたら、Yシャツの第一ボタンははずれてるし。
 ネクタイゆるみすぎだろー、結び目見えちゃってるじゃん。
 背広もよれよれだし、
 これ(ズボンを差して)ちょっとたるみすぎじゃないの?
 違反学ランのボンタンみたいじゃん。
 なんか“ダメ会社員”って感じのいでたちだよね」
B「ダメ会社員ですよ。僕なんて、会社とかどうでもいいですもん」
A「会社への愛着心とスーツの汚さは比例しないだろー。
 (Bのローファーを差しながら)
 靴だけじゃなく学生みたいな事言いやがって」

B「普段は全然服装違いますよ」
A「へー、そうなんだ」
B「ヒップホップ……ぽい格好してますもん」
A「想像に易いよ。ああ、そういう、ダボダボした感じの?」
B「そうそう、YO! YO! みたいな」
A「(わざとらしく凄みながら)ハハハ…って笑いにくいな」

B「バッタモンのTシャツとか
 いっぱい持ってますよ。ウケねらいで」
A「ん?バッタもんて、一昔前の“サザエボン”みたいなやつ?」
B「そうそう」
A「微妙じゃね?」
B「ノバうさぎのバッタモンとか。
 電車の中で知らない高校生とかに指さされるんですよ。
 (うれしそうに)
 “あーノバうさぎだ、でもちょっとちがくない?”って」
A「うーん、でもさ、百歩譲ってバッタもんを認めてもだよ、
 パロディーじゃなくて、ただ似てるバッタもんて微妙じゃね?」
B「でも全然違うんですよ、色とか」
A「ピンクじゃないんだ」
B「紫なんです」
A「微妙じゃね?」
B「口のところだけピンクとか」
A「そんなにあるの?」
B「色違いで3着」
A「微妙じゃね?」

(ふと我に返り落ち込んだように一息つきながら)

A「会社員って本当に退屈なのな。せめて早く今の会社脱出したいよ」
B「僕もですよ」
A「おお、お前だったらどんな会社行きたい?」
B「いや……」(モジモジしながら)
A「もしかしてベンチャー企業興しちゃうとか!?」
B「僕は……バンドでも」(誇らしげに)
A「あー、そういえば言ってたね! あれ? ボーカル? だっけ?」
B「今はちょっと休止中で。まずはダイエットしないと」
A「本気だねぇ。何キロ落としたいんだっけ?」
B「25キロ……」
A「それはきついなぁ」
B「でもバンドはいい感じで。バンド自体は活動してるんです」
A「ふんふん」
B「渋谷のライブハウスも、もうほとんどどこでも出演出来て、
 今度夜の部に出るんです。
 メジャーデビューのオファーも来てて…」
A「ん? 君がボーカル……なんだよね?」
B「はい」
A「今は誰が歌ってるの?」
B「ベースが」
A「オファー来ちゃってるじゃん」
B「ええ、だからプロデビューまでに何とか早く痩せて復活しないと
 置いて行かれるから……!」
A「……すでにもう、相当置いて行かれているぞ」

オリジナル投稿(2004.11.11 Thursday 14:01)
【コント】ドビン チャビン カイシャイン

profile
コヤナギ ユウ
コヤナギ ユウ
(yours-storeダイヒョー)
イラストレーター・デザイナー・プランナー、株式会社yours-store代表。趣味が趣味に留められず「始めることが大切」と見切り発車し、「続けることがいちばん大切」と雪だるま式に人を巻き込む。登山とカメラが今の趣味で雑誌マニア。社会科見学先でハンカチーフを集めている。
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