- i001
- コヤナギユウ(yours-store)
働くオンナの5年間、
ブログ「i live you!」の傑作を再構成
i REwrite you!
満員電車をやり過ごす同志=妄想「チームメンバー」から不測の不祥事!
わたしゃオンナとして落選ですか、と。

写真はニューヨークの地下鉄にて車掌ごっこを楽しむ2006年の私。まつざきみわこ編集長撮影
都心で会社勤めをしている以上、避けられないのが通勤時の満員電車。
アジアを実感するほど密着率の高い車内にて、よりストレスを軽減させるため、いつも「面白味」を探している。
同じ駅から乗車する人には妙な連帯感が生まれたりしないだろうか。
とくに同じ乗車口から乗る人。
私の場合、その人たちを朝の満員電車という苦行に耐えるチームメンバーだと想定して、ホームで電車を待っている間、メンバーの確認をしつついろいろ妄想する。
今日は少しラッシュ時間からずれていたせいか、急行なのに同じ乗車口から乗ったのは私を入れて3名。
ひとりは長身の30代後半の男性。
濃紺のカシミアロングコートにダークカラーのストライプマフラー。縦四つ折りにしたコンパクトな新聞が彼の武器だ。
名付けるなら、コードネームは「ニュースペイパー」に決まり。
もうひとりは紺とオフホワイトのスタジャン。えんじのマフラーに顔を埋め、ベージュのニット帽と黒縁眼鏡。年齢と身長は私と同じくらい。観察している間に1度目が合ったが、すぐにそらされてしまった。うん。やや内向的な感じ。UKロックとか妙に詳しそう。
コードネームは「ロッキンオン」。
以上が満員電車というミッションを乗り越える三軒茶屋の「チームメンバー」だ。
ほどなくすると電車がホームに滑り込んできた。
車内は見た目こそ混んでいるがまずまずの密度。
乗り込んでしまえば「チームメンバー」の妄想もすっかり忘れ、他の乗客の人間観察や、電車広告に見入り始めていた。
前が詰まっているらしく、最徐行運転の電車。
緩やかな振動に身を任せ、週刊誌の見出しに目を通していた。
すると突然、女性の金切り声が上がった。
「みなさーん! 聞いてください! ここに痴漢がいます!!」
その車両に乗り合わせた乗客が、一斉に声の方へとふり向く。
私の目の前にはさっきの長身の男性「ニュースペイパー」がいたため、様子は見えない。
かろうじて出入り口の窓に反射した影で、声を上げた女性だけは見えた。
背は低く年齢は30歳前後。
髪は真っ黒なストレートで長いワンレングス。
これでもかと眉間に深いしわを寄せて「不快」を表している。
「何ごそごそしてるのよ! あなた触ってたでしょ?!」
周りの人も目撃してはいなかったようで、誰も加勢ができず傍観ムード。
変な間が空いてしまい、静まりかえる車内。
すると今度は予期せず、
ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨ!
と、高い警報音が鳴りだした。
「この音なに?」
「防犯ベルだよ」
「ああ」
近くのカップルがこそこそと話す。
「もう分かったからじゃないわよ! こっちはね、あんたのおかげで朝から気分が悪いのよ!」
最徐行の電車はなかなか駅に着かない。
誰も話すことのない車内に、止まることのない護身用の防犯ベル。
「(鳴り出したら)止められないんじゃない?」
と、さっきのカップル。
痴漢逮捕劇の真後ろにいたお兄さんが、ずっと背を向けていたのに、くるりとまわって痴漢の人の腕をつかみ、拘束したようだ。
お兄さんは無言ながら「こんなに近くだし、誰もなんにもしないし、やっぱ俺が、この痴漢を駅員に引き渡すの手伝った方がいいよね。女の人ひとりだし」と物語るような表情をしていた。うざい正義感を振りかざしたり、正論ぶつけて来るような人ではなく、いい人なんだとガラスの反射越しから観察して思った。
電車はやっと渋谷駅に着いた。
たくさんの人がいったんホームに出て、劇中の2人(3人)の為に道を空けた。
もちろん、止まることのない防犯ベルはホームにも鳴り響き、女の人は「ここに痴漢がいますー!」と関西弁っぽいイントネーションで声を張った。
そして余裕ができた車内で身をひるがえし、私はやっと痴漢をした人の顔を見た。
あ!
紺とオフホワイトのスタジャンにニット帽。
コードネームは「ロッキンオン」……!
うちのチームメンバーじゃないか!!
同志から痴漢が出るなんて……
ん? 待てよ。
私、ホームであの人と目があったぞ。
と言うことは何?
あれ? 私、予選落ちしたってこと?
わたしゃ、オンナとして落選ですか?!
な……なんなのこの敗北感……!
痴漢になんて遭いたいわけじゃないけどさ!
実際、ほっとんど遭ったことないんだけど!
分んないけど……ものすごく悔しい。
今すぐ防犯ブザーの渦中へ飛び込んで殴り掛かりたい。
これぞ痴漢の二次災害か、マジでホントに痴漢はダメ、ゼッタイ。
というわけで、三軒茶屋チームメンバーはこれにて解散!
明日の朝、改めて新メンバーを募りたいと思います!
オリジナル投稿(2005.01.21 Friday 10:02)
「言われてみたいよ 一度くらい」心の俳句


-
- コヤナギ ユウ
- (yours-storeダイヒョー)
- イラストレーター・デザイナー・プランナー、株式会社yours-store代表。趣味が趣味に留められず「始めることが大切」と見切り発車し、「続けることがいちばん大切」と雪だるま式に人を巻き込む。登山とカメラが今の趣味で雑誌マニア。社会科見学先でハンカチーフを集めている。
- ・ブログ:i live you!

-

- i006
- 江戸風呂上等!
銭湯のお作法十箇条

- i007
- キツすぎた富士登山に
格言が降る


































