「処女」より「童貞」の方が笑い易いのは私が女だからだろうか。


思春期のそれは非常に重々しくのしかかり、いわゆる「卒業」をしていないと自分が不良品かB級品にでもなった気がする。そんな強迫観念からか、ワッシワッシと服と貞操を脱ぎ捨てる夏を謳歌するのも青春である。


かたや、脱ぎ捨てられない者ももちろん、いる。


特に童貞はひとつのパワーなような気がしてならない。
年頃の男性にとっての性欲は女子の「ウズウズ」とはワケが違う。
2009年7月に、野村監督がイマイチ結果を出せなかったチームに対し「ススキノのせいや。」と発言したのも記憶に新しいだろう。
男性の性欲という莫大なパワーを蓄積している「童貞」というのは、未知数の能力を秘めているようだ。


本作は、とあるイベントで拝見することができた。ザ・童貞!という出で立ちの「童貞2号」こと梅澤嘉朗(24才)くんの童貞っぽい日常を追ったドキュメンタリー映画だ。ゴミ処理場に勤務する彼は自主制作映画の監督であり、80年代アイドルオタク。実家暮らしの自室は壁一面が本棚でサブカル本だらけ。とりわけ「島田奈美」に夢中で、好きが高じて「独立宣言」という映画まで撮ってしまった。作品中ではその映画まで見ることができる。


まじめに暮らし、コレクションの本を1円でも安く手に入れるため、休日にはブックオフを何軒もハシゴする。基本的に低姿勢で挙動不審だが、同居の両親には強気。24才といえども、まるで中学生のような振る舞いは見事に「男の子」である。


専門学校のとき好きだった女の子と再度デートさせられることになった2号くん。恋心が過去になったからか「緊張ガチガチ」ということもなさそうだが、ヘタなリードで、会話も弾むことなくデートは進む。
時間を消化しただけの帰り道、2号くんは女の子を最寄り駅まで送っていくことになった。


車内という密室。
女の子とふたりきり。
うまくいったとは言えないデート。
近づく別れ。
無言の時間。


そんな重圧に耐え兼ねてか、2号くんは何の前触れもなく、突然、吐く。


あまりにも当然で爆笑できるほどだ。


「男」も「男の子」も自分勝手で不器用だ。
それに振り回されてイライラしてばかりいたけれど、いきなり吐いた2号くんのゲロを見て、「気遣いたいけど出来ない」ことへの「かわいい」と思える気持ちが、私の中でほんのり芽吹いた気がした。


童貞。をプロデュース2 ビューティフルドリーマー

童貞。をプロデュース2 ビューティフルドリーマー(映画)
監督:松江 哲明
製作:チップトップス
配給:SPOTTED PRODUCTION
時間:85分
公開:2007/08
DVD未発売
http://www.spopro.net/virgin_wildsides/index.htm

「童貞っぽい作風」で定評のある漫画家・古泉智浩氏の中で、童貞じゃない主人公たちが「童貞っぽい思想を炸裂させる」アンソロジー。


「童貞っぽさ」と言われても、みうらじゅん的なことしか思いつかずピンと来なかったのだが、一読してみてなるほど。童貞っぽい。


SEX描写を多く含むマンガではあるが、いわゆる「エロ本」とは全く違い、男子が読んだところで全く抜けず、また濡れないだろう。


ここに描かれているエロはどす黒く、グニャグニャに歪んでしまっている。


歪んでしまっているからこそすれ違う男女の関係が、どこか「他人事」のように淡々と描かれている。


高級車を乗り回し、どこでもSEXをして、弱きをいじめ強気に屈する主人公(チャラ男)は、恋人を大切に出来ず捨てられてしまう。そして最後にひざを抱えて「みゆきのおっぱいないめたいよ。ううう うえーん」と泣くのだ。


男はプライドの生き物だなんて言うけれど、それは対外的なことであって、孤独を与えた場合、女の方がよっぽどプライドが高いと思う。
女はどんなに自分が悪くとも、そういう感情は解放しない。
自分の行動に自責の念をこぼすのが精一杯だろう。


どっちが辛くてどっちが楽かは分らないが、孤独になった時の行動が「自然な姿」だとしたら、男女のいい関係が見えて来る気がした。


生身の女を知らないから、童貞の思考回路は自己中心的で一方通行だ。しかし、童貞を捨てればそれがいきなり解消されるわけじゃない。
経験を重ね、教わり、学ぶのだろう。(女もそうだけど)


だったら、やはり童貞的な思考回路は男の根本である。
窮地に追いやられたとき、ぽろりと現れる症状はきっと「童貞」だろう。
それは「男」だから仕方ない。


自分の思い通りにならないと、とたんに我を忘れ取り乱す男たち。女に絶望してみたり、逆に遊び回ってみたり。それが「男のバカさ」だろう。


「情けない」「男らしくない」などと背を向けるのは簡単である。
女だって完成された「理想の王子さま」を探し続けているのは「バカ」だ。


短絡的で自己中心的な「バカさ」が、男と言う性がもたらす不可抗力ならば受け入れるより仕方がない。
理性や理屈で押さえつけられないのも「バカさ」に含まれるのだ。


果たして私は、「うえーん」と泣けるほど、男を解放してやれる女になれるのだろうか。


いっつも泣かれちゃ、困るけど。


ピンクニップル

ピンクニップル(コミック)
著者:古泉 智浩
出版社:青林工藝舎
ISBN-10:4883792633
ISBN-13:978-4883792634
発売日: 2008/04
価格:1,155円(税込)
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コヤナギ ユウ
コヤナギ ユウ
(yours-storeダイヒョー)
イラストレーター・デザイナー・プランナー、株式会社yours-store代表。趣味が趣味に留められず「始めることが大切」と見切り発車し、「続けることがいちばん大切」と雪だるま式に人を巻き込む。登山とカメラが今の趣味で雑誌マニア。社会科見学先でハンカチーフを集めている。
エッセイ:i REwrite you!