雨のせいか、性格なのか、はたまたホルモンの悪行か。
私の気分は上がったり下がったり結構忙しい。


「オー、メーン!」と怒りにまかせて毒づいたかと思えば、その5分後には「ごめんなちゃい」と反省して涙を流す。気分の乱気流に巻き込まれまいと必死で操縦かんを握ってはいるものの、思わぬ突風にあっけなくひっくり返ることなんて日常茶飯事だ。でも、素晴らしきかな人生。それでもどっこい生きている、なんて思えたりするから割と幸せだ。


ところが厄介なのは、これという理由もなくじくじく気分が湿っているとき。
すべてが負のループに巻き込まれ、気分は冷たい底なし沼にずぶずぶ沈んだように身動きがとれなくなる。


そんな状況にから抜け出すのにオススメなのが、いわずと知れたカリスマモデル・押切もえのエッセイをまとめたこの本だ。


モデルとしての体型や年齢コンプレックス、デビューしてからも続けていた日雇いバイト、仕事絶頂期での大事故など、成功するまでの苦労が綴られている。


順風満帆でないことなんて当たり前だし、もえちゃんは恵まれていると正直思う。ティーンのカリスマだけにエグいところまでは踏み込まず、タイトルの割に物足りない印象だ。でも、全体に漂うもえちゃんの「気合い」が透けて見える気がした。モデルとして成功するためなら手段は選ばない。なんでもしてやるぜ、かかってこいオラ! みたいな。


三十路の女子なら、きれいに語られた出来事の裏側にどんな葛藤があったのか想像できるだろう。もえちゃんの人生の乱気流に共感できて、ちょっと気になる存在になった。


ずぶずぶな気分でも「低空飛行の今日の自分なりに、まだできる努力があるはずだ」と大げさでないやる気がじんわり湧いてくる。
落ち込みの底なし沼から、もえちゃんの細い腕で引き上げてくれそうだ。


モデル失格〜幸せになるためのアティチュード

モデル失格〜幸せになるためのアティチュード(新書)
著者:押切もえ
出版社:小学館
ISBN-10:4098250241
ISBN-13:978-4098250240
発売日: 2009/02/03
価格:777円(税込)

いくら真面目で正直に生きていたって、理不尽なことは起きるし、腹の立つことだってたくさんある。そんな窮地にどうするかで、意外と人間の大きさがわかったりするものだ。


小心者の私は、迷わず心の中で「おともだちパンチ」をお見舞いすることにしている。そう、この小説から拝借した必殺技だ。「おともだちパンチ」とはもちろん、親指を拳の中にしまい込んだ“愛ある鉄拳”のことである。あら、ご存知ない?


この小説は、大学を舞台に冴えない「先輩」が天然ボケの「黒髪の乙女」への片思いゆえに思わぬ大冒険を繰り広げるはちゃめちゃな青春物語。4章あるエピソードはどれも想いもよらぬ絡み方をする緻密な構成にびっくりさせられる。黒髪の乙女の天然ぶりにクスクスが止まらないから、電車の中で読むのは注意が必要だ。


おまけに、明治や大正時代を思わせる古めかしく言葉遣いが頻繁に登場。なんともいえない文学の香りと洒落っ毛を演出しているのがもうたまらん。久しぶりに大声で「大好き!」と言いたい作品に出会ってしまった。


少々嫌なことがあっても、ひとたびこの小説を読み返せば、間違いなく心がウキウキする。登場人物と同じシチュエーションになったら思わず使いたくなる、そんなセリフの宝庫なのだ。


失敗したときには「恥をしれ! しかるのち死ね!」とにやけながら自分を責め、恥ずかしい行動をとってしまったら「自分よ自分よ、何ゆえ不毛にご活躍!?」と首をかしげよう。


憂鬱も失敗もいらだちも、ぜーんぶ茶化して「まいっか」に変えてくれる、雨でも嵐でも自然と足取りも軽くなる魔法の1冊。
この本に出会うと出会わないとじゃ、憂鬱との付き合い方も大違いかも!?


夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女(文庫)
著者:森見登美彦
出版社:角川グループパブリッシング
ISBN-10:4043878028
ISBN-13:978-4043878024
発売日: 2008/12/25
価格:580円(税込)
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まつざき みわこ
まつざき みわこ
(complex gala.編集長)
「ソフト面」の編集を担当するフリーライター。エンタメ系から小難しい系までいける理論派だが、感情が先走るクセがあり、時折フリーズする。必殺技はベリーダンスだが恥ずかしがって披露しないという、これまたアンビバレンスな彼女である。
ブログ:虹色玉虫