今回の歌舞伎座特集の原稿を書くのに、歌舞伎や江戸文化にまつわるあれこれを調べた。
その中で私の興味を惹きつけて離さなかったのが、吉原遊郭だ。
エロにまつわる文化って、どうしてこんなに奥が深いのかしら。
この「さくらん」では、幼い頃に親の借金の方に身売りされた主人公「とめき」が、春を売るプロ予備軍の禿(かむろ)として育てられ、トップスターの花魁「きよ葉」へと出世していく姿が描かれる。
男に買われているように見えて、実は自分の意のままにしているというプライド、遊廓を居場所と決めた覚悟、そしていつかは絶対幸せになってやるというギラギラの欲望がきよ葉を魅力的に輝かせている。
花魁の商売道具は、まさに自分の身ひとつ。
男たちに言ってほしい言葉をささやかせ、欲しいものを手に入れる技=手練手管を身に付けた遊女たちは「色恋」のプロ、つまり「エロ」と「幻想」を操って男を幸せにしてあげる仕事人なのだ。
恋心を扱う商売だけに、遊廓にはたくさんの「御法度」や「タブー」が存在する。しかし、人の心は時に暴走するもの。本音とたてまえ、真心と技巧が複雑にからみあった世界で男女がカラダを交える……なんてドラマティック!
それから、「色恋」という至極プライベートなことを、オフィシャルな仕事として極めようとする矛盾も、吉原の奥深さのひとつだろう。
「男を惹きつけるためにそんなことまで!」というプロ根性に驚いたり、「自分だったら……」と想像したり。
厳しい掟がなぜ作られたかを逆算して考えることで男女の恋愛法則が見えてきたりするのが、これまたおもしろいのだ。
一度オトナになってしまえば、何でも自分で決めなくちゃいけなくなる。仕事も恋人も生き方も。
もちろんそれは「自由を手に入れた」ということだけど、自分を食べさせ、気持ち良くさせ、面倒を見ていくのは、実はとても大変なことなのだ。
自分の思い通りにいかないことも多いだろう。でも、もう子どもには戻れない。自分の力で幸せを掴み取るしかないのだ。
どんなときでも、堂々と顔を上げて腹の据わったきよ葉のように自分の生き方に胸を張れるだろうか?
きよ葉の人生哲学からヒントがもらえるかもしれない。

- さくらん(コミック)
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ISBN-10: 4063348296
ISBN-13: 978-4063348293
発行日:2003/11
価格:857円(税込)
花魁がいた吉原遊郭は何も江戸時代に限ったことではない。
今の日本にも、男性を悦ばせて身を立てる女性が待つ花街があるのだ。
この本の著者は30代後半、一流大卒のソープ嬢。
いわゆる「本番」を生業とする彼女が、現場で見てきた男性の実態や恋愛・セックスに関するデータを元に、未婚男女が大量に発生している現状を賢くリアルに説く。
この「賢くリアル」というところがポイント!
「モテるための〜」とか「愛される〜」とかいうノリだけの本とも違うし、「実録〜」とか「銀座のホステスが説く〜」とかいうリアルだけの本とも違う。
ロジックがすんなり感覚に訴えてくる恋愛やエロについての哲学本はそうそうないだろう。
「昔は非常識だった恋愛結婚が今は主流になってきている」「結婚の目的が男の経済力ならば、専業主婦は「家事とセックス」が仕事の専属契約」などなど、眼からうろこが落ちるとともに、いろいろと考えるべき「ネタ」を提供してくれること間違いなし。
男女関係やエロの歴史を交えながらの講義に、今が浮き彫りになる。家同士の契約だった結婚も、今では自分で納得できる相手を選択しなければいけなくなった。うまくいくのも失敗するのも、自分の腕次第ってわけか。
そりゃあ「婚活」も必要になるわけだ。
社会学者が言う「このままの生活で理想の王子様に出会う確率」が限りなく0に近くても、心のどこかでまだ淡い幻想を捨てきれず、婚活ブームには踊らされないわよ、なんて思っていたあなた。
この本を読めば、「努力と戦略なしには結婚という道は閉ざされたままだ!」と心底実感できます。
世の中のリアルに眼を開かせてくれるこんな一冊もたまにはいいかも。

- 独身女性の性交哲学(新書)
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ISBN-10: 4576072129
ISBN-13: 978-4576072128
発売日: 2007/11/30
価格:1,500円(税込)


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- まつざき みわこ
- (complex gala.編集長)
- 「ソフト面」の編集を担当するフリーライター。エンタメ系から小難しい系までいける理論派だが、感情が先走るクセがあり、時折フリーズする。必殺技はベリーダンスだが恥ずかしがって披露しないという、これまたアンビバレンスな彼女である。
- ・ブログ:虹色玉虫





