お金のことをこっそり「夢のチケット」と呼んでいる
無限でないそのチケットで、夢を選んで叶えているのだ
随分前の話になるが、パリからやって来たオシャレな育児マガジン「Milk」の創刊号に、子供の金銭感覚の育て方が載っていた。
それによれば、お手伝いをした対価としてのお駄賃はNGだそうだ。働くことのイメージが、お金のための我慢になってしまうから。3歳くらいから「週100円」等のお小遣いを決めて、欲しい物を選び、決定させることが大切だと書いてあった。
そんな我が家はバリバリ「お駄賃制」だった。
夕方、大酒飲みの父のために毎日瓶ビール6本を買いにいくと、週に1度の火曜日は週刊少年ジャンプを買ってもらえるという仕組み。(首都圏では月曜発売の少年ジャンプも、新潟では火曜発売である。それにしても利率低っ)
確かに、その頃の私の消費観念は「我慢の対価」と言って良い。
消費に対するイメージががらりと変わったのは20才の時だ。
自分で何かを創り、発信することを模索していた私は、当時唯一の特技であるイラストをポストカードにして、渋谷構内や表参道など路上に座り込み無許可販売をしていた。
絵だけでは自信がなかったので、友達から借りたミシンを使ってマゼンダピンクのロングファーをあしらったブックカバーや、販売箇所が駅だったため、「回数券入れ」なんかを作って売っていた。
山のものとも海のものとも知れない、知名度ゼロの小娘のイラストなんか誰が買うのだろうと我ながら思っていた。とはいえ他に手段がなかった。
商品点数を増やし、客がどれを買おうか「迷う」ということがエンターテインメントになると気がつくと、毎日出店するたび新商品を1点追加。ポストカードは150種にも登った。。それは商売というより認めて欲しかったからだと思う。「何かな?」と思って足を止めるフックを1つでも多く増やしたかった。
かなり意外なことに、回数券入れがヒットし、追ってポストカードも売れた。
まだ路上アーティストという存在が珍しかったし、渋谷駅構内で駅ビルが閉店した22時から終電まで、幼さの残る女の子が真夜中に座り込んで何やらカラフルなものを並べているのが受けたのだろう。残業終わりのサラリーマンやOLが、今日という日の自分へのご褒美に、ポストカードを手にしていく。
そうして受け取るお金は今までと全然違った。
1枚150円のポストカードを3枚買ったら450円。450円もあったらスタバでいい感じのデザートコーヒーのひとつも買えるのに、その人は「デザートを口にする」という夢ではなく、「ポストカードを手にする」という夢を叶えることにしたのだと思った。
そうすると、物を買う、買ってもらうということは、なんてステキなことだろうと思った。
それから、私はお金のことをこっそり「夢のチケット」と呼んでいる。実際、お金で解決できる欲望は結構あるわけで、無限でないそのチケットで、夢を選んで叶えているのだなと思った。もちろん、私も。
消費や衝動買いは悪とされがちだけれど、それはお金に対する考え方の違いだと思う。きちんと選び、つかみ取ることが出来ていれば、それは間違いなくクリエイティブな作業になる。自分の夢を、未来の自分とその環境を創っていくのだ。
冒頭に紹介した「Milk」の記事はこう続いていた。
上手にお金を使うことで、お金を回すことができる感覚が身に付く。お小遣いは計画性を伸ばす道具なのだ、と。
お金を大切にするというのは、ガッチリ抱え込むだけじゃないと私は思う。好きなものを見つけて、買う。胸躍ることに使えば、胸躍ることが発展する。
安さや代用に甘んじず、「欲しい」を叶えるお買い物は、とってもクリエイティブな行動なのだ。


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- コヤナギ ユウ
- (yours-storeダイヒョー)
- イラストレーター・デザイナー・プランナー、株式会社yours-store代表。趣味が趣味に留められず「始めることが大切」と見切り発車し、「続けることがいちばん大切」と雪だるま式に人を巻き込む。登山とカメラが今の趣味で雑誌マニア。社会科見学先でハンカチーフを集めている。
- ・エッセイ:i REwrite you!





